在職年金

加給5/10 在職定時改定による加給の加算

在職定時改定によって加算される加給

令和4年4月1日、老齢厚生年金に「在職定時改定」という新たな年金額の改定制度が導入されます。

老齢厚生年金の年金額は、受給権を取得前の加入期間に基づきます。65歳前に支給される特別支給の老齢厚生年金は支給開始年齢に達する前の加入期間に基づき、65歳から支給される本来支給の老齢厚生年金は65歳前の加入期間に基づきます。受給権を取得した以後に在職して厚生年金に加入した期間は、退職して加入者の資格を失うと年金額に反映されます。退職前の加入期間に基づいて年金額が再計算されるのです。これを「退職改定」といいます。

新たに導入される「在職定時改定」は、本来支給の老齢厚生年金を受給できる人のうち、毎年9月1日において厚生年金加入者として在職している人について、10月以後の年金額を8月以前の加入期間に基づく額に改定する制度です。今までは在職中に年金額が改定されることはありませんでしたが、令和4年度からは年一度、定期的に改定されることになるのです。なお、制度が導入されるのは令和4年4月1日ですが、初めての「在職定時改定」は令和4年9月1日を基準として行われます。また、在職定時改定は65歳以後に支給される本来支給の老齢厚生年金について適用され、65歳前に支給される特別支給の老齢厚生年金については適用されません。

たとえば、65歳前の加入期間が19年で、65歳以後も68歳になるまでの3年間厚生年金に加入した場合の加給は、今までは、退職改定によって年金額に反映される加入期間が22年(20年以上)となる退職(68歳)以後の年金に加算されていました。

在職定時改定によって加算される加給

在職定時改定によって加算される加給

これが、たとえば在職定時改定が導入される令和4年4月1日時点でちょうど65歳になる人だとすると、令和5年9月の在職定時改定によって年金額に反映される加入期間が20年5カ月(20年以上)となるため、令和5年10月以後の年金に加給が加算されます。今までと比べるとより早い時期から加給が加算されるわけです。

在職停止1/12 老齢厚生年金の在職停止とは?

老齢厚生年金の在職停止

老齢厚生年金を受給できる人が、厚生年金の加入者として在職しているときは、年金額と給与額に応じて老齢厚生年金の一部もしくは全部が支給停止されます。

老齢厚生年金は65歳から支給されます。また、生年月日によっては、65歳前に特別支給の老齢厚生年金を受給できる人もいます。一方、たとえば正社員として会社勤めをしている人は、最長で70歳になるまで厚生年金の加入者とされます。

老齢厚生年金の在職停止

老齢厚生年金の在職停止

 

老齢厚生年金は厚生年金加入者として在職していても支給されますが、その場合は年金額と給与額に応じて年金額の一部もしくは全部が支給停止されます。これを、在職年金あるいは在職停止などといいます。給与額が多ければ多いほど支給停止額が多くなり、受給できる額が少なくなります。ときには全額停止といって1円も受給できない場合もあります。なお、65歳からは老齢基礎年金も支給されますが、老齢基礎年金は在職停止されません。在職停止は厚生年金制度内の話しです。

また、70歳以後は正社員として勤めていても厚生年金加入者とされませんが、70歳前の加入者と同じ条件で勤めている人は、老齢厚生年金が在職停止されます。この人を、70歳以上被用者などといいます。

在職停止2/12 65歳前の在職停止額の計算式

65歳前の在職停止額の計算式

65歳前に支給される特別支給の老齢厚生年金を受給できる人が、厚生年金加入者として在職している場合、基本月額と総報酬月額相当額との合計額が28万円を超えると、老齢厚生年金が在職停止されます。これを「低在老」などといいます。合計額が28万円を超えなければ在職停止されません。厚生年金加入者として在職していても、年金を全額受給できるケースもあります。

65歳前の在職停止額の計算式

65歳前の在職停止額の計算式

基本月額はその人の年金月額です。特別支給の老齢厚生年金の年金額は、以前は報酬比例部分と定額部分それに加給年金額という3つの部分が支給されましたが、支給開始年齢の引き上げによって現在支給されるのは報酬比例部分のみとなっています。この場合は報酬比例部分の月額が基本月額です。

総報酬月額相当額は、在職停止される月の標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額を12で割った額との合計額。簡単にいえば過去1年の賞与を含む月収です。

低在老の在職停止額の計算式は、基本月額が28万円以下か28万円を超えるか、また総報酬月額相当額が47万円以下か47万円を超えるかによって4つに分かれています。その人の基本月額と総報酬月額相当額に応じて当てはまる計算式で計算される額が、その人の在職停止額です。

在職停止3/12 65歳以後の在職停止額の計算式

65歳以後の在職停止額の計算式

本来支給の老齢厚生年金を受給できる人が、厚生年金加入者として在職している場合、基本月額と総報酬月額相当額との合計額が47万円を超えると、超える額の1/2の額が支給停止されます。これを「高在老」などといいます。高在老の計算式はこれ1つしかありません。

 

65歳以後の在職停止額の計算式

65歳以後の在職停止額の計算式

本来支給の老齢厚生年金の年金額は、報酬比例部分と経過的加算額それに加給年金額という3つの部分に分かれます。高在老における基本月額は報酬比例部分の月額です。加給は報酬比例部分が一部でも支給されれば支給され、報酬比例部分が全額停止されると停止されます。報酬比例部分すなわち基本月額は報酬に応じて停止額が増減しますが、加給は支給されるか停止されるかのどちらかです。経過的加算額は在職停止の対象外です。報酬比例部分と加給年金額がすべて停止されても、経過的加算額は最後の最後まで支給されます。

総報酬月額相当額は低在老と同じ、在職停止される月の標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額を12で割った額との合計額です。

在職停止4/12 在職停止額の計算例

在職停止額の計算例

たとえば、65歳前の特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)が月額12万円、65歳からの本来支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)が月額12.3万円という人がいるとします。なお、65歳からの本来支給の老齢厚生年金は、報酬比例部分の他に経過的加算額が月額0.5万円、加給年金額が月額3.2万円あって、合計で月額16万円だとします。

この人が総報酬月額相当額つまり賞与込みの月収25万円で厚生年金加入者として在職しているとすると、65歳前の特別支給の老齢厚生年金の在職停止額は4.5万円です((総報酬月額相当額25万円+基本月額12万円-28万円)×1/2)。12万円の年金額のうち4.5万円が停止され、受給できるのは7.5万円です。ちなみに、この例では総報酬月額相当額が40万円だと停止額が12万円となり、全額停止となります。

在職停止額の計算例

在職停止額の計算例

一方、65歳からの本来支給の老齢厚生年金は報酬比例部分が基本月額です。総報酬月額相当額と基本月額との合計額が47万円を超えないため在職停止されず(総報酬月額相当額25万円+基本月額12.3万円=37.3万円)、経過的加算額と加給年金額を含む全額を受給できます。ちなみに、この例では総報酬月額相当額が34.7万円を超えなければ、在職停止額は0円です。

単純にいうと、特別支給の老齢厚生年金は年金額と報酬との合計額が28万円を超えると在職停止が始まり、本来支給の老齢厚生年金は年金額と報酬との合計額が47万円を超えると在職停止が始まるといえます。在職停止は、特別支給の老齢厚生年金のほうが厳しいということです。

在職停止5/12 特老厚も高在老方式に一本化

65歳前も65歳以後と同じ計算方式に

令和4年4月1日、在職年金について制度改正が行われます。老齢厚生年金を受給できる人が厚生年金加入者として在職しているときの支給停止は、65歳前の特別支給の老齢厚生年金については28万円を基準とする「低在老」、65歳からの本来支給の老齢厚生年金については47万円を基準とする「高在老」でしたが、令和4年4月以降の支給分から、特別支給の老齢厚生年金についても「高在老」とされます。つまり、在職停止は65歳前後にかかわらず「高在老」方式に一本化されるのです。

65歳前も65歳以後と同じ計算方式に

65歳前も65歳以後と同じ計算方式に

たとえば、65歳前の特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)が月額12万円という人が、総報酬月額相当額25万円で厚生年金加入者として在職しているとすると、今までは低在老方式であったため4.5万円が停止され、受給できるのは7.5万円でした。これが、令和4年4月分以降は高在老方式となり支給停止されず全額受給できるようになるのです。ちなみに、この例の場合、高在老方式によって支給停止されるのは、総報酬月額相当額が35万円を超える場合です。

今まで低在老方式であったため在職停止されていた人も、高在老方式になると停止額が減って受給額が増えるという人が多いのではないでしょうか。

在職停止6/12 特老厚が高在老方式となる男性

計算方式の変更の影響を受ける男性

特別支給の老齢厚生年金の在職停止が、28万円を基準とする「低在老」から47万円を基準とする「高在老」に変わるのは、令和4年4月支給分からです。

昭和32年4月1日生まれの人は令和4年3月31日に65歳になり、翌月の4月分から本来支給の老齢厚生年金を受給します。特別支給の老齢厚生年金は3月分まで受給するため、この改正は影響しません。男女にかかわらず、昭和32年4月1日以前生まれの人の特別支給の老齢厚生年金の在職停止は、受給開始から終了まで低在老です。

計算方式の変更の影響を受ける男性

計算方式の変更の影響を受ける男性

昭和34年4月1日生まれの男性は令和4年3月31日に63歳になり、翌月の4月分から特別支給の老齢厚生年金を受給します。その在職停止は高在老です。昭和34年4月1日以後生まれの男性の特別支給の老齢厚生年金の在職停止は、受給開始から終了まで高在老です。なお、昭和36年4月2日以後生まれの男性は特別支給の老齢厚生年金を受給できないため、この改正は全く影響しません。

昭和32年4月2日から昭和34年3月1日までの間に生まれた男性の特別支給の老齢厚生年金の在職停止は、受給開始のころは低在老であり、令和4年4月分から受給終了までは高在老です。

在職年金7/12 特老厚が高在老方式となる女性

計算方式の変更の影響を受ける女性

特別支給の老齢厚生年金の在職停止が、28万円を基準とする「低在老」から47万円を基準とする「高在老」に変わるのは、令和4年4月支給分からです。

昭和32年4月1日生まれの人は令和4年3月31日に65歳になり、翌月の4月分から本来支給の老齢厚生年金を受給します。特別支給の老齢厚生年金は3月分まで受給するため、この改正は影響しません。男女にかかわらず、昭和32年4月1日以前生まれの人の特別支給の老齢厚生年金の在職停止は、受給開始から終了まで低在老です。

計算方式の変更の影響を受ける女性

計算方式の変更の影響を受ける女性

昭和35年4月2日生まれの女性は令和4年4月1日に62歳になり、翌月の5月分から特別支給の老齢厚生年金を受給します。その在職停止は高在老です。昭和35年4月2日以後生まれの女性の特別支給の老齢厚生年金の在職停止は、受給開始から終了まで高在老です。なお、昭和41年4月2日以後生まれの女性は特別支給の老齢厚生年金を受給できないため、この改正は全く影響しません。

昭和32年4月2日から昭和35年4月1日までの間に生まれた女性の特別支給の老齢厚生年金の在職停止は、受給開始のころは低在老であり、令和4年4月分から受給終了までは高在老です。

在職年金8/12 高収入の役員などの在職停止

報酬が高い役員などの在職停止

厚生年金は会社員や公務員などの労働者を対象とする公的年金です。社長をはじめとする役員は労働者とはいえませんが、法人に使用される者という理屈をつけて厚生年金加入者とされます。これは健康保険においても同じです。

役員には定年がありません。労働者(従業員)は定年の60歳で、あるいは定年後に継続雇用、再雇用されても65歳前後で退職するのが一般的ですが、役員は年齢にかかわらずその座に留まり続けます。そうなると70歳になるまでは厚生年金加入者として、また70歳以後は70歳以上被用者として老齢厚生年金が在職停止されます。

報酬が高い役員などの在職停止

報酬が高い役員などの在職停止

しかも役員は一般的に報酬が高いため、老齢厚生年金が全額停止される恐れがあります。在職停止の対象外の経過的加算額は受給できますが、その額は年額数万円程度です。在職停止とは関係ない老齢基礎年金と合わせても、年額で100万円にも達しません。

役員はその座に留まり続ける限り、老齢厚生年金の受給はほぼ望めないのではないでしょうか。

在職年金9/12 加入者とされる役員とは?

加入者とされる役員

老齢厚生年金が在職停止されるのは、厚生年金加入者として在職しているからです。70歳以後は加入者とされませんが、加入者とされる人と同じ条件で勤めている70歳以上被用者は、老齢厚生年金が在職停止されます。

会社に勤める労働者(従業員)が厚生年金の加入者とされるかどうかは、労働時間や労働日数などによって判定されます。労働時間や日数が極めて短いパート労働者は、加入者とされません。

一方、社長をはじめとする役員は労働者ではないため、厚生年金の加入者とされるかどうかについて時間や日数は関係ありません。月に数日しか出社しない非常勤役員であれば加入者にならない…とはいえないのです。

加入者とされる役員

加入者とされる役員

役員が厚生年金加入者とされるかどうかの一つの基準は、「法人から労務の対象として報酬を受けているかどうか」です。これは大昔、昭和24年に当時の厚生省から発出された「通知」によるものです。これをざっくりいえば、出社日数や時間にかかわらず「法人から報酬を受けていれば加入者とされる」ということです。なお、法人に労務を提供していることが前提でしょうから、仮に報酬が支払われていても労務提供の実態がなければ加入者にはならないと考えます。

定年がなく報酬が高い役員は、その座にある限り何歳になっても老齢厚生年金が在職停止されます。これを受給したいというときは、役員を退くか、あるいは停止されない程度まで報酬を下げるほかないのでしょうか。