繰下げ受給

繰下げ1/17 繰下げ受給による年金額の増額

繰下げ受給による年金額の増額

65歳から支給される老齢厚生年金や老齢基礎年金は、66歳から70歳になるまでの間の希望する時点から「繰下げ受給」することができます。ちなみに、繰上げ受給は64歳11カ月の月に請求する1カ月だけの繰り上げができますが、繰下げ受給できるのは66歳以後のため、最低でも1年間は繰り下げなければなりません。

繰下げ受給による年金額の増額

繰下げ受給による年金額の増額

老齢年金を繰下げ受給すると、年金額が「0.7%×繰下げ月数」の割合で増額されます。「繰下げ月数」は、65歳になった月から繰下げ申出をした月の前月までの月数です。たとえば、70歳になった月に繰下げ申出をした場合の繰下げ月数は、65歳になった月から70歳になる月の前月までの月数ですから60月です。この場合の増額率は「0.7%×60月=42%」です。

繰り下げをせず65歳から通常受給する年金額を100%とすると、5年遅く70歳から繰下げ受給した場合の年金額は、42%増額されて142%になるというわけです。増額は一生涯続きます。

なお、繰り下げできるのは70歳までの5年ですが、令和4年4月1日以後に70歳になる昭和27年4月2日以後生まれの人は、75歳までの10年の繰り下げが可能となります。これに関しては別ページをごらんください。

繰下げ2/17 受給累計額は何年後に逆転するのか?

繰下げ受給と通常受給の累計額の比較

老齢年金を繰下げ受給すると年金額が増額されますが、65歳より遅くから受給しているため、「受給累計額」については通常受給のほうが繰下げ受給より先に積み上がります。

65歳から通常受給する場合の年金額を100%とすると、たとえば70歳から繰下げ受給をした場合の年金額は、老齢厚生年金も老齢基礎年金も142%になります。この二つの年金を合わせると、65歳からの通常受給は「200」、70歳からの繰下げ受給は「284」です。70歳時点の累計額は、通常受給が「200×5年=1000」であるのに対し、繰下げ受給は「0」です。

繰下げ受給と通常受給の累計額の比較

繰下げ受給と通常受給の累計額の比較

ただし、70歳以後は、繰下げ受給の累計額が通常受給の累計額に毎年「84」ずつ追いついていきます。こうなると「1000÷84=11.9年後(11年11カ月後)」に、繰下げ受給の累計額が通常受給の累計額を逆転します。

受給累計額に限っていえば、繰下げ受給を始めた70歳から11年11カ月後、つまり81歳11カ月より早く死亡した場合は繰下げ受給の効果がなかったことになり、81歳11カ月より長生きすると効果があったことになります。ただし、これはあくまでも一つの物差し、参考材料の一つです。

繰下げ3/17 累計額の逆転は常に11年11カ月後

累計額の逆転は繰下げ開始から11年11カ月

老齢厚生年金や老齢基礎年金を66歳以後から繰下げ受給した場合の累計額が、65歳から通常受給した場合の累計額を逆転する時期は、何歳何カ月から繰下げ受給をしても、必ず繰下げ受給開始から11年11カ月後です。

累計額の逆転は繰下げ開始から11年11カ月

累計額の逆転は繰下げ開始から11年11カ月

たとえば、68歳から繰下げ受給をした場合の年金額は、老齢厚生年金も老齢基礎年金も「0.7%×36月=25.2%」増額されて125.2%になります。二つ合わせて「250.4」です。68歳時点の累計額は、65歳からの通常受給が「200×3年=600」であるのに対し、繰下げ受給は「0」です。

ただし、68歳以後は繰下げ受給の累計額が通常受給の累計額に毎年「50.4」ずつ追いついていきます。こうなると「600÷50.4=11.9年後(11年11カ月後)」に繰下げ受給の累計額が通常受給の累計額を逆転します。

繰下げ4/17 老厚・老基を自在に繰り下げできる

老齢厚生年金と老齢基礎年金は自在に繰り下げ

繰り上げ受給は、老齢厚生年金と老齢基礎年金を一緒に繰り上げなければなりませんが、繰下げ受給はこの二つの年金を自在に繰り下げできます。

たとえば、老齢厚生年金を65歳から通常受給し、老齢基礎年金だけを繰下げ受給することができます。あるいはこの逆に、老齢基礎年金を65歳から通常受給し、老齢厚生年金だけを繰下げ受給することもできます。

老齢厚生年金と老齢基礎年金は自在に繰り下げ

老齢厚生年金と老齢基礎年金は自在に繰り下げ

また、たとえば老齢基礎年金を67歳から繰下げ受給し、老齢厚生年金を69歳から繰下げ受給するなど、二つの年金を異なる時点から繰下げ受給することもできます。

繰下げ5/17 特老厚受給者の繰り下げの手続き

65歳時請求ハガキの繰下げ受給記載欄

65歳前に支給される特別支給の老齢厚生年金は、65歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金とは、別の年金です。ちなみに、特別支給の老齢厚生年金は繰下げ受給できません。特別支給の老齢厚生年金を通常どおり受給した上で、65歳からの老齢厚生年金と老齢基礎年金を繰下げ受給します。

特別支給の老齢厚生年金を受給していた人には、65歳の誕生月が近づくと、ハガキ形式の65歳からの老齢厚生年金と老齢基礎年金の請求書が郵送されてきます。これには「繰下げ受給希望欄」が設けられています。老齢厚生年金と老齢基礎年金を両方とも65歳から通常受給するときは、「繰下げ受給希望欄」には手を触れず、それ以外の必要事項を記入してハガキを返送します。これで老齢厚生年金と老齢基礎年金が通常支給されます。

65歳時請求ハガキの繰下げ受給記載欄

65歳時請求ハガキの繰下げ受給記載欄

たとえば、老齢厚生年金だけを繰下げ受給し、老齢基礎年金を通常受給しようというときは、「繰下げ受給希望欄」の「老齢厚生年金のみ繰下げ希望」を◯で囲み、その他の必要事項を記入してハガキを返送します。これで老齢基礎年金が通常支給されます。老齢厚生年金は66歳以後の希望するときに年金事務所に出向き、繰下げ受給の手続きをします。老齢基礎年金だけを繰下げ受給するときは、この逆です。

繰下げ受給は、65歳時の通常受給の請求を保留するものです。ハガキは、老齢厚生年金と老齢基礎年金という二つの年金の請求書であるため、どちらか片方だけを繰下げ受給するときは「その年金のみ繰下げ希望」を◯で囲んで返送しますが、こうしたからといって繰り下げを希望した年金は必ず繰下げ受給しなければならないわけではありません。後にその年金を通常請求して通常受給することもできます。

老齢厚生年金と老齢基礎年金を両方とも繰下げ受給しようというときは、ハガキを返送しないで放っておきます。その後、老齢厚生年金と老齢基礎年金それぞれについて、66歳以後の希望するときに年金事務所に出向き、繰下げ受給の手続きをします。このときも、繰り下げではなく通常受給の請求をすることも可能です。

繰下げ6/17 高収入の在職者が繰り下げすると?

繰り下げ中に在職していた場合

65歳以後、厚生年金加入者として在職する人は、老齢厚生年金の繰下げ受給について注意が必要です。

老齢厚生年金を受給できる人が厚生年金加入者として在職していると、年金額と報酬(給与)に応じて老齢厚生年金の一部もしくは全部が支給停止されます。在職年金あるいは在職停止などといわれる仕組みです。なお、65歳から支給される老齢厚生年金の年金額のうち、在職停止されるのは報酬比例部分です。経過的加算額は在職停止の対象外とされ、報酬がいくら高くても支給されます。また、老齢基礎年金は在職停止には関係ありません。厚生年金加入者として在職していても全額受給できます。

たとえば、65歳から「報酬比例部分9万円+経過的加算額1万円=10万円」という老齢厚生年金を受給できる人が、報酬50万円の厚生年金加入者として在職していると、「(報酬比例部分9万円+報酬50万円-47万円)×1/2=6万円」が在職停止されます。報酬比例部分は9万円のうち6万円が停止され、受給できるのは3万円。これに、在職停止されない経過的加算額1万円が加わって、受給額は4万円となるのです。

繰り下げ中に在職していた場合

繰り下げ中に在職していた場合

さて、この人も老齢厚生年金を繰下げ受給できます。仮にこの人が在職していなくて、老齢厚生年金を5年繰り下げて70歳から繰下げ受給すると、年金額が「10万円×42%=4.2万円」増額されます。ただし、上記のとおり報酬50万円で在職していると、繰下げ受給による増額は、「4万円×42%=1.68万円」となるのです。

繰り下げ中は老齢厚生年金を受給していませんが、厚生年金加入者として在職していた場合は、在職停止の仕組みを当てはめて受給できる額だけが繰下げ増額されるのです。在職していても報酬が低くて停止額が0円の場合は、年金額の全額が繰下げ増額の対象となります。逆に報酬が高くて報酬比例部分が全額停止される場合は、報酬比例部分は1円も増額されず、経過的加算額だけが増額対象となります。報酬の高い人が繰下げ受給をしても、年金額の増額は期待できない場合があるのです。

繰下げ7/17 今までの繰り下げは70歳まで

繰り下げできるのは70歳まで

老齢年金を繰り下げできるのは70歳までです。これは70歳過ぎ、たとえば73歳のときに繰下げ申出をしたときは、70歳に達した日に繰下げ申出をしたものとみなされるからです。70歳過ぎまで繰り下げることはできません。

繰り下げできるのは70歳まで

繰り下げできるのは70歳まで

繰下げ申出をすると、申出をした月の翌月分からの年金が支給されます。その年金額は、65歳になった月から繰下げ申出をした月の前月までの月数に応じて増額されています。

たとえば73歳のときに繰下げ申出をしたときは、70歳に達した日に繰下げ申出をしたものとみなされるため、3年さかのぼって、70歳に達した月の翌月分からの年金が支給されます。その年金額は、65歳になった月から70歳になった月の前月までの月数によって「0.7%×60月=42%」増額された額です。70歳までしか繰り下げできないため、60月が繰下げ月数の上限で、42%が増額率の上限です。

繰下げ8/17 75歳まで繰り下げ可能に!

75歳まで繰り下げできるようになる

老齢年金を繰り下げできる限度は今まで70歳でしたが、令和4年4月1日、75歳まで繰り下げできるようになります。

今までは70歳過ぎに繰下げ申出をしたときに70歳に達した日に繰下げ申出をしたものとみなされていましたが、この「70歳」が「75歳」に変わります。したがって70歳過ぎ、たとえば73歳から繰下げ受給できるようになります。75歳過ぎに繰下げ申出をしたときは、75歳に達した日に繰下げ申出をしたものとみなされます。75歳過ぎまで繰り下げることはできません。

75歳まで繰り下げできるようになる

75歳まで繰り下げできるようになる

繰り下げによる年金額の増額率は、繰下げ月数ひと月当たり0.7%で変わりません。今までは70歳までの60月が繰下げ月数の上限であったため、「0.7%×60月=42%」が増額率の上限でしたが、75歳までの120月が繰下げ月数の上限となり、「0.7%×120月=84%」が増額率の上限となります。

繰下げ9/17 累計額の逆転は11年11カ月後で変わらず

累計額の逆転時期は11年11カ月で同じ

老齢年金を75歳まで繰り下げできることになっても、繰下げ受給の累計額が65歳からの通常受給の累計額を逆転する時期は、繰下げ受給開始から11年11カ月後であることは変わりません。

65歳から通常受給する場合の年金額を100%とすると、75歳から繰下げ受給をした場合の年金額は、老齢厚生年金も老齢基礎年金も184%になります。二つの年金を合わせると、65歳からの通常受給は「200」、75歳からの繰下げ受給は「368」です。75歳時点の累計額は、通常受給が「200×10年=2000」であるのに対し、繰下げ受給は「0」です。

累計額の逆転時期は11年11カ月で同じ

累計額の逆転時期は11年11カ月で同じ

ただし、75歳以後は、繰下げ受給の累計額が通常受給の累計額に毎年「168」ずつ追いついていきます。こうなると「2000÷168=11.9年後(11年11カ月後)」に、繰下げ受給の累計額が通常受給の累計額を逆転します。

75歳から繰下げ受給をした場合、年金額が2倍近くになるのは魅力です。ただ、この場合、受給累計額が逆転するのは86歳11カ月です。そもそも65歳から10年間、年金を受給せず繰り下げできる人はそう多くないのではないでしょうか。

繰下げ10/17 75歳まで繰り下げできるのは?

75歳まで繰り下げできる人

老齢年金を75歳まで繰り下げできるようになるのは、令和4年4月1日です。ただし、75歳まで繰り下げできるのは、令和4年3月31日時点において70歳に達していない人、つまり「昭和27年4月2日以後生まれ」の人に限られます。

75歳まで繰り下げできる人

75歳まで繰り下げできる人

昭和27年4月1日以前生まれの人は、令和4年3月31日以前に70歳に達しています。令和4年3月31日以前は70歳までしか繰り下げできないため、単純にいうと、昭和27年4月1日以前生まれの人は改正前に繰下げ受給を始めているはずです。その年金の支給を一時ストップして、75歳までの繰り下げを認めることはできないため、昭和27年4月1日以前生まれの人が繰り下げできるのは70歳までとされるのでしょう。

なお、たとえば昭和27年4月1日生まれの人は令和5年3月31日に71歳になります。令和4年4月1日以後は75歳まで繰り下げできます。ただし、この人が71歳となったこの日に繰下げ申出をしたとしても、この人は生年月日から改正前の仕組みが適用される人のため、70歳に達した令和4年3月31日に繰下げ申出をしたものとみなされます。

75歳まで繰り下げできるのは、令和4年4月1日以後に70歳に達する、昭和27年4月2日以後生まれの人です。なお、たとえば昭和27年4月2日生まれの人は令和3年4月1日に69歳になります。この人が69歳から繰下げ受給をしていた場合、その年金の支給を一時ストップして75歳までの繰り下げが認められることはありません。