加給・振替加算

加給1/10 老齢厚生年金に加算される加給年金額

加給と振替加算

たとえば、老齢厚生年金を受給できる夫に、生計を維持する65歳未満の妻または原則として高校生以下の子どもがいると、老齢厚生年金に加入年金額が加算されます。いわば、配偶者や子どもを対象とする扶養手当に当たる加算額です。

生計維持の条件は、この場合でいうと夫(子どもからいえば父)と妻や子どもが生計を同じくしていて、妻や子どもの年収が850万円未満であることです。必ずしも夫のほうが妻より収入が多くなければならないということはありません。たとえば、年収400万円の夫の年金に、年収800万円の妻を対象とする加給が加算されるケースもあります。また、男女は関係ないため、妻の年金に夫を対象とする加給が加算されるケースもないわけではありません。

加給と振替加算

加給と振替加算

ただし、加給が加算されるためには、老齢厚生年金の年金額が20年以上の加入期間に基づいていること、つまりその老齢厚生年金を受給できる人が20年以上厚生年金に加入していることが必要です。老齢厚生年金は加入期間が20年未満であっても受給できますが、その場合、加給は加算されません。

なお、年金額が報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金には、加給は加算されません。この場合の加給は、65歳から支給されるいわゆる本来支給の老齢厚生年金に加算されます。

加給2/10 加給年金額は定額

加給の額・特別加算額

老齢厚生年金の加給年金額は定額です。なお、1級または2級の障害厚生年金には配偶者加給年金額が、また障害基礎年金には子どもを対象とした加算額が、さらに遺族基礎年金には子どもを対象とした加算額が加算されますが、いずれも金額は同額です。

加給や加算額の金額は、配偶者および第一子、第二子については一人当たり224,700円、第三子以降は一人当たり74,900円です(金額はすべて令和3年度の年額)。たとえば、加給対象である高校生以下の子ともが3人いる場合の加給の額は、合計で「224,700円×2人+74,900円=524,300円」です。いちばん上の子が高校を卒業すると加給対象の子が2人になるので、「224,700円×2人=449,400円」となります。

加給の額・特別加算額

加給の額・特別加算額

老齢厚生年金の配偶者加給年金額には、特別加算額が加算されます。老齢厚生年金を受給できる人の生年月日に応じて、33,200円~165,800円がさらに加算されるのです。たとえば、令和4年4月1日に65歳になる昭和32年4月2日生まれの人の老齢厚生年金の配偶者加給は、224,700円に165,800円が特別加算されて390,500円です。なお、障害厚生年金の配偶者加給には特別加算はありません。

加給3/10 老齢基礎年金に加算される振替加算

振替加算の額

老齢厚生年金や障害厚生年金の配偶者加給の対象となるのは、65歳未満の配偶者です。たとえば、夫の老齢厚生年金に加算される妻を対象とする加給は、妻が65歳になると加算されなくなります。これは、妻が65歳から老齢基礎年金を受給できるからです。

日本の公的年金は、一階が基礎年金、二階が厚生年金という二階建てです。ただし、二階部分の厚生年金は、その人がたまたま会社員として厚生年金に加入したから支給される年金です。公的年金として最低限保障しているのは基礎年金です。

すべての人を、少なくとも20歳から60歳になるまでの40年間にわたって国民年金の強制加入者とし、すべての人に65歳から満額の老齢基礎年金を支給する。これこそが、公的年金による最低限の老後保障です。もちろん、たとえ満額であっても老齢基礎年金だけでは生活できませんが、制度の理屈の上では、満額の老齢基礎年金を受給する65歳以上の人は、公的年金による老後保障を受ける人です。

加給はいわば扶養手当です。たとえば、夫の老齢厚生年金に妻を対象とする加給が加算されるのは、妻が夫に扶養されているからです。同じひとりの妻を、一方では公的年金による老後保障を受ける人とし、もう一方で夫に扶養される人とするのは矛盾します。そこで、夫の老齢厚生年金の配偶者加給は、妻が65歳になると加算されなくなるのです。

加給と振替加算

加給と振替加算

ただし、専業主婦が国民年金の3号という強制加入者とされたのは昭和61年4月1日からです。それ以前の専業主婦は、国民年金は強制加入ではありませんでした。たとえば若くして結婚し以後ずっと専業主婦だった妻は、3号制度ができたときに20歳未満だった昭和41年4月2日以後生まれであれば、3号期間が40年間あって満額の老齢基礎年金を受給できます。一方、3号制度ができたときに20歳以上だった昭和41年4月1日以前生まれの専業主婦の妻は、3号期間が40年未満のため満額の老齢基礎年金を受給できません。しかもこれは、この妻の責任ではなく制度のせいです。

振替加算の額

振替加算の額

そこで、老齢厚生年金や障害厚生年金の加給対象だった配偶者のうち、昭和41年4月1日以前生まれの人の老齢基礎年金に、加給の額とその人の生年月日に基づいて計算される額が加算されます。あたかも、夫の年金の加給が妻の年金に振り替わるように見えることから、これを「振替加算額」といいます。

加給4/10 退職改定による加給の加算

退職改定によって加算される加給

老齢厚生年金に加給が加算されるには、年金額が20年以上の加入期間に基づいていること、つまりその老齢厚生年金を受給できる人が厚生年金に20年以上加入していることが必要です。

65歳から支給されるいわゆる本来支給の老齢厚生年金の年金額は、65歳前の加入期間に基づきます。それが20年以上であれば、65歳から加給が加算されます。65歳前の加入期間が20年未満の場合、たとえば19年の場合は65歳からは加給は加算されません。

退職改定によって加算される加給

退職改定によって加算される加給

ただし、この人が65歳以後も在職して厚生年金に加入し、仮に68歳で退職したとすると、年金額が退職前の加入期間に基づく額に改定されます。これを「退職改定」といいます。この例の退職前の加入期間は、65歳前の19年に65歳以後の3年がプラスされて22年となり、20年以上であるため、退職改定後の老齢厚生年金に加給が加算されます。

加給6/10 加給が支給停止されるとき

加給の支給停止

老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額は、加給対象の配偶者が20年以上の加入期間に基づく老齢厚生年金を受給できるときは支給停止になります。

たとえば、夫の65歳からの老齢厚生年金に妻を対象とする加給が加算され始めたとします。その後しばらくして、年下の妻が特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢になりました。その年金額が20年以上の加入期間に基づく場合、つまり妻の厚生年金の加入期間が20年以上である場合、夫の老齢厚生年金の加給は支給停止されるのです。

加給の支給停止

加給の支給停止

20年以上の加入期間に基づく老齢厚生年金はある程度の年金額なのだから、それを受給できる妻を対象とした扶養手当に当たる加給はいらないでしょ…というわけです。なお、この場合は、妻の老齢基礎年金に振替加算額は加算されません。

昔は、「夫婦が共に20年以上厚生年金に加入すると損をする」、「妻は20年以上加入しないほうが良い」などといわれたこともありました。加給が支給停止され、振替加算が加算されなくなるからです。ただ、今は昔と比べて老齢年金そのものの給付水準が下がっています。また、加給も一定期間しか加算されません。加給の支給停止を気にするより、妻もなるべく長く厚生年金に加入して夫婦共にしっかりとした老齢年金を作り、長生きしてその年金を受給したほうが良いと思います。

加給7/10 配偶者の年金が全額停止であれば

加給対象者の年金が全額停止されている場合

たとえば、夫の老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額は、加給対象の妻が20年以上の加入期間に基づく老齢厚生年金を受給できるときは支給停止になります。ただし、妻の老齢厚生年金が全額支給停止されている場合は、夫の年金の加給は停止されず加算されます。

加給対象者の年金が全額停止されている場合

加給対象者の年金が全額停止されている場合

老齢厚生年金を受給できる人が厚生年金加入者として在職していると、年金額と報酬額に基づいて年金額の一部もしくは全部が支給停止されます。いわゆる在職停止です。報酬つまり給与が高いと、老齢厚生年金が全額停止される場合もあります。また、特別支給の老齢厚生年金は、会社を退職して雇用保険の基本手当を受給している間、基本手当や年金の額にかかわらず全額支給停止されます。

加給対象の妻が20年以上の加入期間に基づく老齢厚生年金を受給できる人だとしても、その老齢厚生年金が在職停止によって、あるいは基本手当受給によって全額支給停止されている場合は、妻は実際には年金を手にできないのだから、夫の年金の加給は支給停止にせず加算しようということでしょうか。

加給8/10 配偶者の年金が全額停止であっても!

加給対象者が全額停止されていても

令和4年4月1日、老齢厚生年金の加給の支給停止について改正があります。

たとえば、夫の老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額は、加給対象の妻が20年以上の加入期間に基づく特別支給の老齢厚生年金を受給できるときは支給停止されます。ただし、妻のその年金が全額支給停止されている場合は、夫の年金の加給は停止されずに加算されます。これが、令和4年4月以降は支給停止されます。

加給対象者が全額停止されていても

加給対象者が全額停止されていても

たとえば、妻の特別支給の老齢厚生年金が在職停止されるとします。特別支給の老齢厚生年金の在職停止は年金額と報酬(給与)額との合計が28万円を超えると停止されるいわゆる「低在老」ですが、令和4年4月からはこれが改正されて合計額が47万円を超えると停止される「高在老」になります。

仮に妻の年金月額が10万円だとすると、高在老では報酬が37万円を超えると在職停止が始まり、57万円以上になると全額停止されます。これに基づくと、妻の報酬が57万円未満であって妻が老齢厚生年金の一部もしくは全部を受給できるときは夫の年金の加給は停止され、妻の報酬が57万円以上であって妻が老齢厚生年金を全く受給できないと夫の年金の加給が加算される。つまり、妻の収入が少ないと夫の年金の加給が停止され、妻の収入が多いと夫の年金の加給が停止されないことになります。

これは不合理ではないかということで、令和4年4月以降は、妻が20年以上の加入期間に基づく老齢厚生年金を受給できるときは、それを一部でも受給できるときはもちろん、たとえ全額支給停止で全く受給できない場合であっても、夫の年金の加給は支給停止されることになるのです。

加給9/10 加給が支給停止されない経過措置

加給が停止されない経過措置

たとえば、夫の老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額は、加給対象の妻が20年以上の加入期間に基づく特別支給の老齢厚生年金を受給できるときは支給停止されます。今までは、妻の老齢厚生年金が全額支給停止されている場合は夫の年金の加給は停止されずに加算されていましたが、令和4年4月以降は、たとえ全額支給停止であったとしても夫の年金の加給は支給停止されることに改正されます。ただし、これについては経過措置があります。

加給が停止されない経過措置

加給が停止されない経過措置

改正が行われる令和4年4月1日時点において夫の老齢厚生年金に加給が加算されていて、妻が20年以上の加入期間に基づく特別支給の老齢厚生年金を受給できる人であるが、その年金が全額支給停止であったため夫の年金の加入が停止されず加算されていた場合は、その状況が続く限り、それ以後も夫の年金の加給は停止せず加算し続けるという経過措置です。

加給10/10 加給と振替加算の事例研究

加給の事例

老齢厚生年金の配偶者加給と老齢基礎年金の振替加算について、ある夫婦の事例を見てみましょう。

夫は昭和30年8月生まれ。令和2年8月に65歳になりましたが、それ以前の厚生年金加入期間が20年未満であるため、65歳からは加給は加算されていません。ただし、夫は65歳以後も厚生年金に加入しており、67歳を過ぎた令和5年3月まで加入すると加入期間がちょうど20年になります。令和5年3月末日に退職し翌4月1日に加入者の資格を喪失すると、同4月分の年金から20年の加入期間に基づく年金額とされ加給が加算されます。

一方、妻は夫より8歳半年下の昭和39年2月生まれです。妻は既に厚生年金に20年以上加入しており、63歳になる月の翌月である令和9年3月分から特別支給の老齢厚生年金を受給できます。仮に夫の年金に加給が加算されたとしても令和9年3月以降は支給停止になるため、加算される期間は令和5年4月から令和9年2月までの47月間です。

令和3年度の配偶者加給の年額「390,500円」に基づくと、47月間に受給できる加給の総額は「390,500円×47月/12月=1,529,458円」です。

加給の事例

加給の事例

ところで、もし夫が加入期間20年未満で退職すると、妻が65歳になる翌月である令和11年3月以降の夫の老齢基礎年金に振替加算額が加算されます。昭和30年8月生まれの事例の夫の振替加算額は、年額「51,007円」です(令和3年度額)。令和11年3月時点で夫は73歳を過ぎています。70歳男性の平均余命である16年間にわたって振替加算額を受給するものとすると、その総額は「51,007円×16年=816,112円」です。

捕らぬ狸の皮算用ですが、この事例の場合は振替加算より加給を受給したほうが金額としては有利ということです。